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原因の半分は男性にある?! 男性不妊治療の今

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監修/辻 祐治先生(恵比寿つじクリニック 院長)

「妊活」という言葉が一般的になり、不妊治療に取り組むカップルも増えています。女性が中心になるケースが多い不妊治療ですが、不妊の原因の半分は男性側にもあるといわれています。男性不妊の原因や検査方法について、恵比寿つじクリニック院長の辻祐治先生にお話を伺いました。

不妊の原因は男女半々

日本で不妊治療に取り組むカップルは5.5組に1組といわれます。子どもを望む年齢の高齢化や晩婚化も相まって、不妊の検査・治療を希望する人は年々増加しています。

日本の不妊治療は婦人科を中心に行われていますが、2017年の世界保健機関(WHO)の調査によると、不妊症のうち、男性のみに原因があるケースが24%、男女両方に原因がある場合が24%で、合わせて約半数は男性にも原因があるとされています。また、一般男性の約20人に1人は男性不妊症(不妊の原因が男性側にあること)といわれています。

不妊症の原因

男性不妊の原因のうち約8割は、精子の数が少ない、動きが悪いなど、精子をつくる機能に問題がある「造精機能障害」です。原因が不明な場合も多いのですが、分かっているものとして、精巣の静脈に血液が逆流して陰嚢部に瘤(こぶ)のようなものができる「精索静脈瘤」があります。これが男性不妊全体の約3分の1を占めていて、最も多い原因です。精索静脈瘤は手術による治療が可能で、術後は約7割の人で精液所見が改善します。

女性が妊娠・出産できる年齢には制限がありますから、不妊治療は時間との勝負です。男性も加齢によって35歳くらいから精子の質が低下し、妊娠が成立しにくくなります。男女とも同時に検査をスタートさせることが、妊娠への近道です。

男性不妊治療は精液検査から

男性不妊の検査で基本となるのが精液検査です。精液量や精子の数、運動率など、不妊治療を進めるうえで重要な情報を得ることができます。女性が受ける不妊検査は体への負担が大きいですが、男性の検査には痛みも負担も伴いません。

精液検査は精子運動解析装置(CASA)で行われることが多くなっていますが、精子の形や生存率は判定することができないため、男性不妊を専門とする泌尿器科などではWHOのガイドラインに従って詳細に検査しています。精液検査の結果は体調などによって変動することがあるため、検査は原則として2回行い、そのうちの悪いほうを現状と考えます。

精液検査にかかる時間は医療機関により異なります。院内に検査設備があってその日のうちに検査結果が分かる医療機関もあれば、後日改めて受診して検査結果を聞く医療機関もあります。精液検査の結果次第で、さらに超音波検査や血液検査(ホルモン検査)などが必要になる場合もあります。また、精液検査を含めた検査・治療は自由診療の場合が多いですが、保険診療で精液検査を受けられる医療機関もあります。

精液検査の結果はWHOの世界基準値を基に判定されますが、この基準は正常値ではなく、あくまで「下限基準値(最低ライン)」です。この値をクリアしたからといって妊娠が可能というわけではありません。

精液検査の基準値

(WHOラボマニュアル-ヒト精液検査と手技-5版より)

最近では、スマートフォンのアプリとキットを使って精子の状態をセルフチェックできるサービスも登場しています。手軽に現状を知ることができるものの、これも「基準値をクリアしているから大丈夫」というものではありません。異常を見つけ、対策を講じるための最初のスクリーニング(ふるい分け)と考えましょう。たとえ数値に問題が見られなくとも、1年経っても妊娠しない場合は、医療機関で検査を受けることをお勧めします。

専門医に相談し、納得のいく選択を

男性の場合、検査を受ける際は、パートナーとともに婦人科を受診するか、泌尿器科を受診するかのいずれかになります。最近は男性不妊専門のクリニックやリプロダクションセンター/クリニック(男女の生殖医療の窓口を統合した医療機関)など、男性が受診しやすい窓口も少しずつ増えています。

例えば、生殖医療を専門にする泌尿器科医は、一般社団法人日本生殖医学会のリストから調べられます。同学会は男性不妊に関する診療実施内容も公表していますので、こうしたデータも参考になります。また、各都道府県が「不妊専門相談センター」を設置しており、電話やメールでの相談を受け付けている施設もあります。

とはいえ、不妊に関する問題はなかなか相談しにくいものです。自発的に精液検査を受ける人もいれば、パートナーに頼まれてもなかなか検査しない人、あるいは悪い結果を受け入れられず通院をやめてしまう人もいます。しかし、男性側が検査や治療をきちんと行って精子の状態が改善すれば、自然妊娠の可能性も高まります。正しい情報を得て、早くから行動することが大切です。

男女ともに、子どもについての希望が叶えられるよう、正しい知識を身につけたうえで、納得のいく選択をすることが重要です。まずはパートナー2人そろって相談してみることから始めてはいかがでしょうか。

監修者プロフィール
辻 祐治先生(恵比寿つじクリニック 院長)

【辻 祐治(つじ ゆうじ)先生プロフィール】

恵比寿つじクリニック 院長
1980年、福岡大学医学部卒業。1982~1986年、福岡大学大学院医学研究科(医学博士)。米国クリーブランドクリニック特別研究員、福岡大学医学部泌尿器科助教授などを務めた後、2003年、天神つじクリニック(福岡)開設。2008年、恵比寿つじクリニック(東京)開設。男性不妊治療のスペシャリスト。

サワイ健康推進課公式Twitter

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