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口・喉

美声への第一歩!のどの筋トレのススメ

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監修/平野 滋先生(京都府立医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 教授)

いつも通りに話そうとしているのに、なぜだか思うように声を出せない。ここ数年、メールやSNSでのやり取りが多くなり、声を出して対話するコミュニケーションが減ってきていると感じた人もいるかもしれません。発声に関わるのどの筋肉も、使わなければ衰えていきます。のどを鍛え、健やかに保つ方法について、京都府立医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 教授の平野滋先生に伺いました。

のどの老化のサインとは?

最近、次のような症状が気になっていませんか?

これらはのどの筋肉が衰え始めたときに表れる代表的な症状です。
発声は、首のほぼ中央に位置する喉頭(こうとう)が担っています。喉頭の内側には筋肉と粘膜でできた声帯があり、呼吸時には開き、発声時には閉じます。

発声時に声帯が閉じることを「声門閉鎖(せいもんへいさ)」といいます。吐く息が声門をすり抜ける際に声帯の粘膜がやわらかく振動し、音が出ます。その音がのどや口の中で響くと音が大きくなったり、発音が変化したりして「声」になります。

■のどの仕組み

■声帯を上から見た図
(呼吸時には開き、発声時には閉じる)

声帯の変化(呼吸時には開き、発声時には閉じる)

声が出にくいだけなら命に関わることはありませんが、相手に言いたいことが伝わりにくくなり、ますます話すことを避けるなど、コミュニケーションにも影響を与えかねません。

声帯を動かす喉頭の筋力は、加齢と共に低下していきます。筋力が弱くなって声帯がスムーズに動かなくなると、発声時に声帯が閉じにくくなったり、声帯が振動しにくくなったりします。声をうまく出せなくなるのはそのためです。

咽頭(いんとう)には発声だけでなく、食べ物を口から胃へと送り込む一連の動作である飲み込み運動をさす嚥下(えんげ)という重要な働きもあります。咽頭の筋力が低下すると、ものを飲み込みづらくなり、飲食中にむせやすくなります。進行すると、飲み込みづらさによるストレスや疲労感から食欲不振に陥ったり、食べ物や唾液が誤って気管に入る誤嚥(ごえん)を起こしたりすることも。唾液などに含まれる細菌が気管から肺に入り込むと「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」のリスクが高まります。

食欲不振による低栄養状態や誤嚥性肺炎は、認知症などの症状を招く場合があります。将来に向けた健康維持のためにも、声の変化やむせやすさに気付いたら、早めにのどの筋肉を鍛えるトレーニングを始めましょう。

声帯を鍛えるトレーニング

声帯を鍛える方法としておすすめなのが「ストロートレーニング」です。さまざまな声の不調の総称である音声障害の治療やリハビリとして、医療機関でも活用されている方法の一つです。ストローを使うことで、声帯への負担を軽減しながらトレーニングできます。

■「ストロートレーニング」の方法

  1. 1  ストローをくわえた状態で「う」か「お」の声を出す。息を吐くのではなく、きちんと音にして声を出すのがポイント。5秒ほどを3回程度繰り返す。
  2. 2  最初に出した声よりも「高い」音程の声を出し、5秒ほどを3回程度繰り返す。
  3. 3  慣れてきたら、ストローをくわえたまま歌ってみる。

音に強弱をつけたり、音程をつけたりしながら、しっかり声を出しましょう。

また、ストローを使わなくても「歌う」「朗読する」など、意識的に声を出す機会も生活の中でつくりましょう。特に、歌声は声帯を伸び縮みさせて振動させるため、トレーニングとして最適です。ただし、声を絞り出して歌うと声帯を傷める原因になるので、無理をせずにに歌える曲を選びましょう。

飲み込む力を鍛えるトレーニング

のどに手を当てて唾液を飲み込むと、のどぼとけが上がるのが分かると思います。この、のどぼとけを上げる筋肉の総称を舌骨筋群(ぜっこつきんぐん)といい、ものを飲み込むときや口を開くときに働いています。

■舌骨筋群の図

飲み込む力を高めるには、舌骨筋群を鍛える「おでこトレーニング」が効果的です。

■「おでこトレーニング」の方法

5秒キープ おでこは下向きにする 手は上向きに押す のどぼとけのあたりに力が入っていることを意識する
  1. 1  おへそをのぞき込むイメージであごを引き、おでこに手のひらを当てる。
  2. 2  おでこに当てた手のひらを押し返すように力を加え、5秒ほどキープ。
  3. 3  休憩をはさみながら、1と2を5~10回繰り返す。

痛みがある場合は無理に行わないようにしましょう。また、行う前に首を左右に回したり、肩を上下にゆすったりして筋肉をほぐしておくと痛みの予防につながります。

保湿、胃酸予防、抗酸化も重要

のどの筋肉を鍛えるトレーニングに加え、のどに負担をかけないケアも大切です。特に湿度が低く、空気が乾燥する冬場はのども乾燥し、イガイガや咳、痛みなどの原因になります。1日1.5リットル以上を目安に水分を摂取し、こまめにのどを潤すことを心がけましょう。

また、胃酸が逆流して、食道やのどに炎症を起こす「胃食道逆流症」にも注意が必要です。のどの保湿のために水分補給は欠かせませんが、アルコールやカフェインを含むコーヒー、紅茶、緑茶などの摂り過ぎは胃酸を増やす要因になります。
水分補給は水道水やミネラルウォーター、イオン水などを中心にするとよいでしょう。

関連記事:胃食道逆流症の症状と対策

さらに、声帯を酷使し、のどに炎症が起こると、活性酸素が増加し、その酸化作用によってのどの組織が傷害されることで、声帯の劣化が進む恐れがあります。

その対策として、抗酸化作用のあるビタミンCを多く含む緑黄色野菜や果物と、ビタミンEを多く含むオリーブオイルやナッツ類、そのほかポリフェノールを多く含む大豆製品、さらにアスタキサンチンを含む桜エビや紅鮭などを意識的に摂取することも、のどのケアにつながる可能性があます。

よく話し、よく食べて、健やかな毎日を過ごし続けることができるよう、のどを大切にしていきましょう。

監修者プロフィール
平野 滋先生(京都府立医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 教授)

【平野滋(ひらの しげる)先生プロフィール】

京都府立医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 教授
1990年、京都大学医学部卒業。UCLA耳鼻咽喉科・頭頸部外科研究員、ウイスコンシン大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科研究員、京都大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科准教授などを経て、2016年より現職。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会代議員。日本喉頭科学会理事。日本口腔・咽頭科学科会議員。日本炎症・再生医学会評議員。日本頭頸部外科学会理事長。日本気管食道科学会理事。

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