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ミライのヘルスケア

進化するベジミート。「肉」はここまでヘルシーになる!

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監修/岸村康代さん(大人のダイエット研究所代表理事/管理栄養士/野菜ソムリエ上級プロ)

大豆を主原料とする植物由来の“肉”が、今、日本で注目され始めています。動物の肉に比べて、低カロリーで、栄養成分が豊富な植物由来の“肉”。その特徴について、フードプランナーで管理栄養士の岸村康代さんに話をお聞きました。

肉と同じように使えるのに、肉よりヘルシー

肉食文化のアメリカでは、数年前から植物由来の代替肉がブームになっています。レストランやファストフード店には、植物由来の“肉”のメニューが次々と登場。スーパーでは植物由来の“生肉”やソーセージが食肉コーナーに並んでいます。ブームの火付け役は、ビヨンド・ミートとインポッシブル・フーズという代替肉のベンチャー企業。ビヨンド・ミートは2016年に、えんどう豆のたんぱく質を主材料にしたハンバーガー用のパティ「ザ・ビヨンド・バーガー」を高級スーパーの肉売り場で販売。“生肉”の状態で提供し、調理するとジュウジュウと音がして肉汁が滴る“肉らしさ”で評判になりました。

一方のインポッシブル・フーズは、大豆タンパクやポテトプロテインに鉄分の味がする「ヘム」という独自素材を加えて、バーガー用パティを開発。大手ファストフードチェーンのバーガーキングと提携し、2019年夏から新商品「インポッシブル・ワッパー」を全米で展開し、人気を集めています。

ヒットの理由は味、食感、見た目が限りなく本物の肉に近づいたこと。「肉と同じようにおいしいのに、肉よりヘルシー」と、普通に肉を食べているヘルシー志向の人たちに支持されました。

もちろん、ベジタリアン(菜食主義者)やビーガン(完全菜食主義者)、最近増えている「フレキシタリアン」(菜食が基本で時々、肉も食べる)にも歓迎されています。欧米諸国では、ヘルシー志向に加え、肉食への罪悪感や畜産が地球温暖化に及ぼす影響、近い将来に予測されている食料不足問題への危機感などを背景に、おいしく食べられる代替肉は、未来のタンパク源としても期待が高まっているのです。

日本でもすでに、植物由来の“肉”の開発は本格化しています。主な原料は畑の肉といわれる「大豆」。豆腐、味噌、しょう油と、大豆文化が根付く日本人にとって、おなじみの食材です。

植物由来の肉なので、食物繊維が摂れる!

大豆を使った肉は、大豆肉、大豆ミート、ソイミートなどと呼ばれます。低カロリーで栄養価が高そうなイメージがありますが、動物の肉と比べてどうなのでしょうか。

ひき肉で比べてみると (100gあたり)

種類 大豆ミート 豚肉
エネルギー 106kcal 209kcal
脂質 1.0g 17.2g
たんぱく質 15.4g 17.7g
食物繊維 5.9g 0g

※大豆ミート(乾燥品)を戻したもの(粒状大豆たんぱくにて計算、3倍に戻すと仮定)
参考:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」

大豆ミートと肉との違いの一つは、脂質の低さです。ひき肉タイプで比べると、豚ひき肉の脂質は100gあたり17.2g、これに対して、大豆ミートは100gあたり約1.0g。約95%の脂質をカットできます。エネルギーも豚肉のほぼ半分です。

さらに、脂質の質が良いのもメリットです。大豆ミートには、動脈硬化などの病気の要因にもなる飽和脂肪酸がほとんど含まれていません。飽和脂肪酸は肉類などの動物性の脂質に多く含まれていて、エネルギー源になりますが、摂りすぎると血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増え、動脈硬化の原因になるといわれます。コレステロールが気になる人は、大豆ミートに置き換えてみるのも手です。

また、大豆ミートには、大豆由来の食物繊維が多く含まれます。動物の肉には食物繊維が含まれていないので、肉食に偏ると食物繊維が不足します。大豆ミートなら、“ハンバーグ”や“ソーセージ”など肉類を食べながら食物繊維が摂れるのです。大豆に含まれる食物繊維は主に不溶性食物繊維。消化・吸収の間に水分を含んでカサが増えるので、便のカサを増したり、腸を刺激して排便を促したりする働きが期待できます。

大豆ミートの食物繊維量は100gあたり14~18g程度。これは乾燥状態なので、1回分20~30g使うとすると、1食あたり3〜4g以上の食物繊維を摂ることができる計算です。ごぼう100g(1/2本程度)あたりの食物繊維が5.7gなので、これと比較しても遜色ない量です。

そして、原料の大豆は「畑の肉」といわれるように、良質なたんぱく質を含んでいます。肉と遜色のないたんぱく質が摂れるうえ、不足しがちな植物性たんぱく質を補うことができます。

大豆や大豆の加工品にはカリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、ビタミンB群のB2、B6、葉酸、パントテン酸なども含まれます。ただし、ビタミンCは含まれないので、ビタミンCの多い野菜やフルーツと一緒に摂るのがお勧めです。また、大豆はオメガ6系脂肪酸が多いので、オメガ3系の油(えごま油や亜麻仁油)を一緒に摂ると、より健康的になります。

しっかりした味付けで、おいしく食べる

大豆ミートには、水やお湯で戻して料理に使う乾燥タイプのほか、ハンバーグやカレーなどの調理済み食品、ソーセージやハムタイプの加工品などがあります。いつもの肉料理を大豆ミートに変えるだけで、普段の食事に取り入れやすくなるでしょう。ハムやソーセージタイプは、しっかり焼くと、よりおいしく食べられます。

乾燥タイプは味がついていないので、独特の大豆っぽさを感じるかもしれませんが、それを取り除く料理のコツは、多めのお湯でしっかり戻すこと。茹でるのが面倒な場合は、電子レンジでも調理が可能です。そして、温かいうちにしょう油などで下味をつけること。調理方法は揚げたり、片栗粉を少量まぶして炒めたりするのがお勧めです。ニンニクや香辛料で、しっかりした味付けにするといいでしょう。大豆ミートは、「ヘルシー素材だから薄味がいい」と考えられがちですが、むしろ下味をしっかりと付けたり、濃いめに味を付けたほうが、おいしくいただけて、長続きしやすくなります。献立の中で、味の薄いものと組み合わせて、おいしく、健康的にいただきましょう。

監修者プロフィール
岸村康代さん(大人のダイエット研究所代表理事/管理栄養士/野菜ソムリエ上級プロ)

【岸村 康代(きしむらやすよ)さんプロフィール】

フードプランナー/管理栄養士/野菜ソムリエ上級プロ/一般社団法人大人のダイエット研究所 代表理事。
大妻女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻。卒業後、商品開発や病院での指導を経て独立。メタボリックシンドローム指導から得た経験を生かし、健康的なダイエットのサポートや、 「繊活」「ズボラ部」など、忙しい大人のための食の提案を行う。 著書に『いつもの料理にかけるだけ おからパウダーダイエット』(セブン&アイ出版)、『落とした脂肪は合計10トン!伝説のダイエット・アドバイザーが教える最強のやせ方』(東洋経済新報社)など。

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