健康レシピ&ダイエット
慢性的に不足しがちな食物繊維をおからパウダーで手軽にたっぷり補給!
監修/三浦理代先生(女子栄養大学名誉教授)
ダイエットや便秘予防などに効果がある食材として最近注目が高まっているおからパウダー。 どんな成分が含まれていて、どのような食べ方をすると効果的なのか、女子栄養大学名誉教授の三浦理代先生に伺いました。
概要・目次※クリックで移動できます。
大さじ2杯でレタス1個分の食物繊維!
おからは、豆腐の製造過程で大豆から豆乳を作った後にできる“搾りかす”。いわば用済みになった部分ですが、そうとは思えないほど豊富な栄養を含むため、古くから「卯の花」(炒り煮)などの常備菜の材料として使われてきました。
しかし水分を多く含む生のおからは足が早く、2~3日程度しか日持ちしないのがデメリット。買ったものの忙しくてなかなか調理できなかったり、一度に使い切れなかったりすると無駄になってしまうことも。
そこで登場したのが「おからパウダー」。生のおからを乾燥させてパウダー状にすることで数カ月単位での常温保存が可能になりました。さらに、生のおからに比べて「手軽に使えて活用の幅も広い」「栄養価が高い」というメリットも。特にたんぱく質やカリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラル、食物繊維などはおからパウダーにより多く含まれています。
生のおからとおからパウダー(乾燥)、それぞれ100g当たりの栄養成分含量を下の表で見てみましょう。
データ:「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」可食部100g当たりに含まれる栄養素の重量
確かにおからパウダーのほうが栄養価が高いですが、おからパウダーを一度に100g摂取するのはあまり現実的とはいえません。そこで大さじ1杯(6g)当たりの栄養成分含量を算出してみました。
データ:「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」より算出
この中で特に注目したいのが食物繊維の量。レタス1玉400g(正味390g)当たりの食物繊維は4.4g(※)ですが、おからパウダーならたった大さじ2杯分でそれを上回る量の食物繊維を摂ることができるのです。
(※)女子栄養大学出版「食品の栄養とカロリー事典」より
便秘を予防・改善する不溶性食物繊維の宝庫
食物繊維は野菜、果物、豆類、海藻類などに多く含まれていますが、外食が多かったり、肉類中心の食生活などをしているとどうしても不足しがちです。また、レタスのような生野菜をたっぷり食べようと思っても、かさがあるため多くの量を一度に摂るのはなかなか難しいものです。
実際、国の食物繊維の1日の摂取目標量は18歳以上の男性では21g以上、女性では18g以上とされていますが、2019年の国民健康栄養調査による食物繊維摂取量の平均値は20歳以上の男性で19.9g、女性で18.0gと不足しています。
グラフ:日本人の食物繊維の目標量と摂取量
データ:目標量は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」、摂取量は「令和元年国民健康・栄養調査」より
食物繊維には水に溶ける「水溶性」と、水に溶けない「不溶性」の2種類があり、どちらも健康を保つうえで重要な役割を果たしています。
<水溶性食物繊維の主な働きと効果(※1)>
- 1:消化管で糖質を取り囲み、糖質の消化・吸収をブロック。血糖値の上昇を抑える
- 2:コレステロールを吸着し、排出。脂質異常症や動脈硬化の予防につながる
<不溶性食物繊維の主な働きと効果(※1)>
- 1:腸内で水分を吸い取ってふくらみ、腸内細菌のえさになる。便の量を増やすことで排便がスムーズになり、便秘の予防・改善につながる
- 2:腸内の有害物質を吸着して便と一緒に排出。大腸がんのリスクを減らす可能性がある
このうち不溶性食物繊維の宝庫となっているのがおからパウダーです。便秘がちな人は、特に積極的に摂るとよいでしょう。
ただし、一度にたくさん摂りすぎるとお腹がゆるくなったり、お腹の中にガスがたまったりすることがあるので注意が必要です。
食物繊維以外に含まれる成分について紹介します。
●たんぱく質――内臓や骨、皮膚、髪の毛など、あらゆる組織を構成する材料 ●カリウム――体内の余分なナトリウムを排出。心臓や筋肉を正常に働かせる ●カルシウム――骨や歯の材料。 ●マグネシウム――骨や歯にカルシウムが行き渡るように助ける。血圧を下げる働きもある
さらに、ビタミンEやイソフラボンも含まれています。どちらも強い抗酸化力を持ち、細胞の老化を促進する活性酸素を取り除く働きがあるとされており、アンチエイジング効果でも注目されている成分です(※2)。イソフラボンは特に閉経後の女性の骨粗しょう症の予防に効果的と報告されています(※3)。いつまでも若々しい体を保ちたい人にとっても、おからパウダーは欠かせない食材の1つといえます。
血糖値の上昇を抑えダイエットの味方にも
料理が苦手な人はもちろん、栄養バランスのとれた献立を毎食考えるのが面倒だったりするときなども、おからパウダーなら手軽に取り入れることができます。味や香りにクセがないので、どんな料理や食品にも合わせやすいのもうれしいところ。
最も簡単なのは、パスタやうどんなどの麺類の上から大さじ1杯程度のおからパウダーをパパッとかけるだけのレシピ。麺が少なめでもかさが増して、満腹感がアップします。 また、朝の味噌汁やスープ、コーヒー、ヨーグルトなどに混ぜるのもおすすめ。忙しくても食物繊維をはじめとする栄養成分をしっかり補給できます。
ちなみに、外出するときにおからパウダーを小分けにして持ち歩けば、職場などでインスタント食品や出来合いのお惣菜などを食べるときにもさっとプラスすることができて重宝します。
また、自分で料理する際にハンバーグのタネに加えたり、クッキーやケーキの材料として活用したりするのもよいでしょう。肉や糖質の摂りすぎを防ぐ効果が期待できます。
なお、薄力粉の代わりにおからを使った「おからケーキ」と、薄力粉を使った「おからなしケーキ」をそれぞれ食べた場合の食後2時間の血糖値を調べた研究では、糖質量が同じであっても「おからケーキ」のほうが「おからなしケーキ」に比べて明らかに血糖値の上昇を抑えられることが確認されています(※)。
ダイエットをしたいけれど、甘いものも食べたい……。そんな人にとってもおからパウダーは頼もしい味方になってくれるはずです。
(※)データ:日本食品科学工学会誌;55,8,367-372,2008
【三浦理代(みうら まさよ)先生プロフィール】
女子栄養大学名誉教授 農学博士・管理栄養士。1969年女子栄養大学栄養学部卒業。2001年、同大学教授に就任。2017年に退任し、名誉教授となる。食品学、食品栄養学を専門とし、野菜の摂取が血液中の酸化ストレス度および抗酸化力に及ぼす影響などの研究を重ねる。