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口・喉

乾燥する季節 口呼吸への注意と対策

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監修/鈴木雅明先生(帝京大学ちば総合医療センター耳鼻咽喉科教授)

空気が乾燥する季節。朝起きたときにのどの痛みを感じる人も多いのではないでしょうか。これは、就寝中の口呼吸が原因の一つ。また、長時間マスクをつける生活も口呼吸を招きやすくなります。口呼吸は感染症をはじめ、さまざまな健康リスクにもつながります。口呼吸のデメリットと対策について、帝京大学ちば総合医療センター耳鼻咽喉科教授の鈴木雅明先生に伺いました。

口呼吸をしていませんか?

以下のチェックリストに1つでも当てはまる場合は、口呼吸になっている可能性があります。皆さんはいかがでしょうか。

口呼吸チェックリスト

呼吸の際に鼻が担う重要な役割

人間は本来、安静時には鼻呼吸をしています。運動したときなど、大量の酸素を取り込む必要があるときには口を開けて、鼻と口の両方で呼吸をします。

呼吸するとき、鼻には2つの大切な役割があります。1つはフィルターのような役割です。鼻の奥の粘膜上には、線毛と呼ばれる細い毛がびっしりと生えていて、同じリズムで揃って弓なり運動を繰り返しています。これは「線毛運動」と呼ばれます。外から入ってきた空気に含まれている細菌、ウイルス、花粉、塵などの不純物は、粘膜でとらえられ、この線毛運動によって外に押し流されます。もう1つ、鼻はエアコンの役割も果たしています。たとえ外界が極度に寒く乾燥した環境でも、吸い込んだ空気を鼻の中で加温・加湿することによって、気道には温度37度、湿度100%の空気を送り、体に必要な熱や湿気を取り込んでいるのです。

口呼吸になると、鼻のフィルター機能やエアコン機能を介さずに、気道に空気が直接入るため、細菌やウイルスに感染するリスクが高まります。特に就寝中は、意識して口を閉じることができず、長時間口を開けたままになりますので、朝起きたときにのどが痛い、よだれが出る、といった症状を自覚する人もいます。いびきや無呼吸から睡眠の質が低下し、さまざまな不調につながることもあります。また、口が乾燥して唾液が少なくなれば浄化作用・殺菌作用が得られず、歯周病菌などの細菌の温床にもなりますので、口臭や歯周病の悪化のリスクも考えられます。

さらに、子どもの口呼吸にも注意が必要です。ポカンと口を開けた状態が習慣になっている子どももいます。幼少のころから口呼吸が習慣になっていると、口まわりの筋肉がゆるんで弱くなります。それによって前歯が前方に突き出たりするなど、長期的にあごの発育(歯並びや噛み合わせ)にも影響を与える恐れがあります。

口呼吸になりやすい原因は?

では、なぜ口呼吸になってしまうのでしょうか。まず考えられるのが、風邪やアレルギーによる鼻炎など、何らかの原因で鼻づまりがある場合です。子どもの場合は、アデノイド(咽頭扁桃)が肥大して鼻の通りを悪くしているケースもあります。

また、顔面の骨格の形状に問題があって空気が通りにくい場合もあります。例えば、正常な歯列は真上から見るとU字型をしていますが、もともとV字型に狭くなっている人もいます。この場合、構造上空気が通りにくく、口呼吸になりやすいのです。放置していると口呼吸を助長してしまいます。特に6歳までは、あごや鼻まわりなどの構造が成長・変形していく時期でもありますので、その間に口を閉じて鼻呼吸ができるように矯正していくことが大切になります。

正常な歯列(U字型)
狭くなっている歯列(V字型)

もう1つ、年齢を問わず、口輪筋など口まわりの筋力が低下することによって、口呼吸になりやすくなる可能性もあります。マスクを長時間付けていると、口の筋肉をあまり動かさなくなって筋力が衰えるために、より口呼吸になりやすいと考えられます。

日常でできる口呼吸対策

口呼吸を防ぐためには、日中であれば意識して口を閉じ、鼻呼吸をすることが大切です。特に、長時間マスクをしていると、息苦しさもあり、鼻と口の両方での呼吸になりがちです。苦しいときに無理をして口を閉じる必要はありませんが、マスクを外す場面など、気づいたときに意識するように心がけましょう。

夜間、就寝中は無意識になり、呼吸を自分でコントロールすることができません。加湿機能のあるマスクをして寝たり、唇の両端にハの字形にテープを貼って筋肉の緩みを抑え、口が開くのを防いだりする方法があります。いびきをかいている場合も口呼吸になっていると考えられます。耳鼻咽喉科や睡眠を専門とするクリニックなどで相談してみてください。あごを押さえるチンストラップやマウスピースなどの医療器具もあります。

筋機能訓練法(Myofunctional Therapy:MFT)を取り入れてもよいでしょう。これは、舌、唇、頬など口まわりの筋肉をトレーニングする方法です。筋力を鍛えるというよりは、悪いくせを取り除き、正しい動きを再教育していくような方法で、矯正歯科などで指導しているところも多くあります。ここでは一例をご紹介します。口まわりの筋肉の衰えを感じている人は試してみてください。

1.鼻呼吸

口を閉じ、片方の鼻を人差し指で押さえ、もう片方の鼻で息を吸って吐きます。反対側も同様に、交互に5回繰り返します。

2.スポットポジション

リラックスした状態で口を閉じ、上あごのくぼみの先の「スポット」に舌の先端を付けます。舌の表面は上あごに付けます。

この状態で30秒間、唾液を飲み込む練習をします。唾液を飲み込むときもスポットから舌を離さないようにします。

3.ポッピング

舌の先端をスポットに付けたまま、舌全体を上あごに吸い付け、口を大きく開けて舌の裏側を伸ばします。それから舌を「ポン!」と音を立てて下におろします。これを10回繰り返します。

鼻でうまく呼吸できないときは早めに受診を

慢性的に鼻でうまく呼吸ができないときは、耳鼻咽喉科に相談しましょう。鼻炎やアデノイド肥大などがある場合は、治療をすることで口呼吸も解決する可能性があります。また、臭いも異変のサインとなる場合があります。稀ですが、口臭などがきっかけとなって悪性の腫瘍が見つかることもあるため、いつもと違うと気づいたら、早めに受診しましょう。

特に外気が低温で乾燥する時期は、ウイルスや細菌の活動も活発になり、感染リスクが高まることから注意が必要です。日常的に鼻呼吸を意識するとともに、加湿器で空気を加湿する、こまめに水分補給をしてのどを潤す、就寝時はベッドサイドにペットボトルの水を置いて水分を摂れるようにするなど、工夫して健康維持に努めましょう。

監修者プロフィール
鈴木雅明先生(帝京大学ちば総合医療センター耳鼻咽喉科教授)

【鈴木雅明(すずき まさあき)先生プロフィール】

帝京大学ちば総合医療センター耳鼻咽喉科教授
医学博士。1989年東北大学卒業後、同大学耳鼻咽喉科入局。米国ワシントン大学耳鼻咽喉科留学、東北大学耳鼻咽喉科院内講師を経て、2004年帝京大学耳鼻咽喉科講師、2010年同准教授、2012年より現職。日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本耳鼻咽喉科学会指導医、日本睡眠学会認定医。

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