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【鼻血が止まらない】応急処置と受診のタイミングを徹底解説!

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監修/市村 恵一先生(東京みみ・はな・のどサージクリニック名誉院長 自治医科大学名誉教授)

鼻水が詰まって通りが悪いときや鼻の中が乾燥して何となく違和感があるとき、鼻を強くかんだり、指で鼻の穴をいじったりしてしまいがちです。人とぶつかったり、ボールが顔に当たるなど、何らかのアクシデントで鼻を強く打つこともあります。そんな時に鼻血がおこりますが、子どもから大人まで誰もが経験していることでしょう。通常は数分で止まりますが、なかなか止まらない、頻繁に出るといった場合には、重大な病気が隠れている可能性もあります。鼻血の正しい応急処置のポイント、危険な鼻血の見分け方、受診のタイミングについて「東京みみ・はな・のどサージクリニック」名誉院長の市村恵一先生に伺いました。

鼻血の主な原因と特徴

鼻の中は多くの血管が集中し、粘膜が薄いので、ちょっとした刺激や傷で出血しやすい部位といえます。ここでは、鼻血の主な原因と出血の特徴について説明します。

鼻血はなぜ出るのか

鼻腔内の粘膜とその中の血管の両方が傷つき、そこから血があふれてくる現象が「鼻血」です(医学用語では鼻出血[びしゅっけつ])。鼻の中は血管の宝庫といわれますが、その中でも中央部にある鼻中隔で鼻の入り口付近にある「キーセルバッハ部位」には特に血管が集中しています。外からの刺激を受けやすい部分でもあり、キーセルバッハ部位からの出血が鼻血の9割を占めています。いろいろな本に「キーゼルバッハ部位」と記載されていますが、正しくは「キーセルバッハ部位」です。

いわゆる「のぼせ」や、乾燥しているときに鼻血が出るのは、いずれもその状態そのものが出血を引き起こすわけではありません。血圧の急激な変動や、乾きによって粘膜に炎症が起こったところに、何らかの刺激(無意識に鼻をいじる、こする)で粘膜や血管が傷ついたために出血が見られるのです。そこで、身体に負担が少ない気温・室温で過ごす、鼻粘膜の潤いが保たれるように加湿することが鼻血の予防につながります。

「チョコレートを食べすぎると鼻血が出る」いわれますが、これは証明されているわけではありません。かつてはチョコレートもたまにしか食べられなかったので、たくさん食べると興奮し、寝ている間に鼻を擦ったことで出血したのだろうと推測されています。ただ、チョコレートに含まれる成分には血管を拡張する作用があるので、人によってはわずかな刺激で鼻血が出る可能性があります。

外力による刺激が原因の鼻血

運動中にボールが顔面に当たったり、人と衝突したりして鼻血が出ることがありますが、外部から加わった刺激で血管や粘膜が傷つくことが原因です。乳幼児は、異物を鼻の穴に詰めたり、鼻をほじったりして出血することがよくあります。これも、異物や指先によって血管や粘膜が傷つけられて出血する、けがの一種(微細損傷)です。

アレルギー性鼻炎が原因の鼻血は、花粉や化学物質に対する炎症反応で鼻粘膜が腫れ、血管が拡張して出血しやすい状況になっているところに、かゆみも加わって鼻をいじることで発生します。

ストレスや疲れと鼻血の関連性

直接的な出血の原因ではありませんが、ストレスや疲れも鼻血を引き起こす誘発因子といえるでしょう。ストレスは、自律神経の乱れや血圧の変動につながります。また、疲れがたまると血液が滞ってしまい、血管が拡張して鼻血が出やすくなると考えられます。

そのほかにも、カッとなりやすい性格を自覚している人は要注意です。「頭に血が上る」といいますが、まさに血圧が急激に変動するイメージです。また、女性では月経周期によるホルモンバランスの変化がストレスになる人もいます。気持ちをリラックスさせ、ストレスや疲れをため込まないことが鼻血の予防にもつながります。そのためには、十分な睡眠で疲労を回復することや、自分に合ったストレス解消法やリラクゼーションを見つけ、心身を健やかな状態にする工夫も大切です。

鼻血が出やすい疾患

鼻血が出やすくなる原因として、血小板減少症や白血病といった血液疾患、血液を固める凝固因子が不足する血友病や、それが作られにくくなる肝硬変などの肝臓の病気、あるいは腎不全や鼻の腫瘍である場合が考えられます。

手術後、血液をサラサラにして血栓を予防する薬(抗血小板薬、抗凝固薬)を服用している人や、脳梗塞・心筋梗塞などの治療もしくは心房細動で予防的に抗血小板薬、抗凝固薬を服用している場合も、出血が止まりにくい、あるいはちょっとした傷でも出血しやすい状態にあるため注意が必要です。

このほか、オスラー病(遺伝性出血性毛細血管拡張症)という全身の細血管に異常が起こる難病でも、鼻血を繰り返しやすくなります。

鼻血を止める正しい応急処置の方法

急に鼻血が出ると、処置に慌ててしまいがちです。止血のためにティッシュを詰める人も多いでしょうが、実は避けてほしい対処法です。ここでは、鼻血を止める正しい応急処置について説明します。

鼻血が出た際の正しい姿勢と圧迫の仕方

(1)姿勢

鼻血が出たら、まずは落ち着いて座りましょう。血が流れ落ちるのを防ぐために横になったり、首を後ろに傾けたりしがちですが、血液がのどに流れ込み、気管に入って咳き込んだり、胃に飲み込んでしまい、吐き気や嘔吐の原因になることがあります。上体は起こして、頭をやや前に傾ける姿勢が良いです。

(2)圧迫法

左右どちらの鼻から出血しているかを確認し、出ている側の小鼻を同じ側の親指で鼻の中心に向かってやや強め(小鼻がふさがる程度)に圧迫します。この時、出血していない方の鼻でゆっくり息をして安静にします。先に述べたような、出血が止まりにくい疾患や抗凝固薬を服用している場合でなければ、圧迫と固まった血液によって3~10分程度で出血は止まるでしょう。

注意点として、ティッシュや脱脂綿を鼻の穴に詰めてしばらく様子を見る、という人も多いかと思いますが、詰める刺激で粘膜を傷つけ、さらに別の部位から出血することもあります。また、ティッシュを取り出す際に、せっかくふさがった傷口のかさぶたをはがしてしまうリスクもあるので、避けてください。基本的には何も入れず、外側に出てきた血をティッシュやタオルで拭き取るのが良いでしょう。

鼻血が止まらない場合の対処法

先に述べたように、鼻血の大半は鼻の入り口近くにあるキーセルバッハ部位からの出血です。ここからの出血は静脈からの出血がほとんどで、長くても10分程度で落ち着くとされています。しかし、鼻腔の奥にある蝶口蓋(ちょうこうがい)動脈から出血している場合は注意が必要です。動脈の血管が傷つくと、大量の出血を引き起こし、短時間での止血が難しいのです。応急処置の方法で止血を行ってもなお出血が止まらない、出血量が明らかに多い場合は速やかに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

鼻血を繰り返す場合の受診のタイミングと治療法

一般的な鼻血の場合は、先の応急処置で止まるケースが多いですが、割合は少ないものの「危険な鼻血」もあります。迷わず医療機関を受診していただきたいケースについて説明します。

繰り返す鼻血や止まらない鼻血の危険性

鼻血につながる鼻粘膜や血管が傷つくような原因が思い当たらないのに、頻繁に出血を繰り返す(1週間に3回以上)、一度出血すると20分たっても止まらない場合は、耳鼻咽喉科を受診し、症状について相談してみましょう。

鼻血に加えて発熱している場合は、感染症や血液疾患の可能性があり、一気に全身状態が悪くなることがあります。出血の勢いが強く、のどの方まで流れて口から吐き出さなければならないような鼻血も危険です。いずれも適切な検査で鼻血の原因を特定し適切な治療が必要なため、そのままにしたり、大したことはないと自己判断をせず、速やかに耳鼻咽喉科もしくは救急外来を受診しましょう。

鼻血の原因を特定するための医療機関での検査内容

鼻血の専門的な治療は、耳鼻咽喉科で行います。まずは問診を行い、鼻血の頻度や持続時間、既往歴、薬の服用歴など詳細を聞きます。既往歴や薬の服用歴によっては、血液検査で貧血や凝固異常の有無を確認します。

鼻の中は、鼻鏡(びきょう)で出血部位を特定します。鼻の奥からの出血とみられる場合は内視鏡を使います。腫瘍性病変が疑われる人や上咽頭の異常を確認した場合には、頭部CTやMRIによる画像検査を実施する場合もあります。

鼻血の治療法と予防法

鼻血の原因は何であっても、突き詰めると鼻粘膜および血管の損傷に集約されます。したがって、主な治療は圧迫もしくは手術による止血になります。

空気が冷たく乾燥する冬場は特に鼻血が出やすいです。鼻粘膜を保湿するために、鼻の入り口に保護クリームを塗る、あるいは加湿器を使うのも効果的です。こまめな水分補給も心がけましょう。外出時のマスク着用は、感染症予防の観点からもおすすめです。

鼻腔内のかゆみの原因となるアレルギー性鼻炎の人は、寝ている間に無意識に鼻を触ったり、こすったりして鼻血が出ている可能性があります。鼻炎をしっかりと治療することで、鼻血の予防にもつながります。

鼻をほじる癖がある子どもは、爪を短く切り、普段からできるだけ鼻の中を触らないように言い聞かせることが大事です。大人でも、つい鼻を触る癖がある人がいます。粘膜や血管を傷つける原因になり得るので、意識してやめましょう。

日常生活で鼻血予防のためにできること

鼻の乾燥状態を防ぐ、鼻血が出やすくなる癖や行動を見直し、疲れを溜めないことも効果的な予防法です。「鼻血が出るかもしれない」という不安やストレスから解放されるためにも、ぜひ日常生活の中でできることから実践してみましょう。

監修者プロフィール
市村 恵一先生(東京みみ・はな・のどサージクリニック名誉院長 自治医科大学名誉教授)

【市村恵一(いちむら けいいち)先生プロフィール】

東京みみ・はな・のどサージクリニック名誉院長 自治医科大学名誉教授
1973年、東京大学医学部医学科卒業。同大学医学部附属病院耳鼻咽喉科、浜松医科大学耳鼻咽喉科を経て、1982年より米アトランタ市エモリー大学留学。帰国後、東京都立府中病院耳鼻咽喉科医長、東京大学医学部耳鼻咽喉科講師その後助教授、自治医科大学耳鼻咽喉科学教授、副学長、石橋総合病院院長などを経て、2019年より現職。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医、日本耳鼻咽喉科学会認定補聴器相談医、補聴器適合判定医(厚生労働省)。小児耳鼻咽喉科学会初代理事長。オスラー病鼻出血治療の第一人者。現在は主に補聴診療を担当。

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