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冬こそ注意しよう! その不調、かくれ脱水かも!?

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監修/谷口英喜先生(済生会横浜市東部病院 患者支援センター長、栄養部部長)

「原因はよく分からないけれど、なんとなく頭が痛い」「胃もたれがする――」。こうした冬場の体調不良は、実は「かくれ脱水」によるものかもしれません。暑さで汗をかくこともなくなり、喉もあまり渇かないからと水分補給を怠ると、脱水症状に陥ることがあります。「かくれ脱水」について、済生会横浜市東部病院 患者支援センター長の谷口英喜先生に伺いました。

乾燥する冬は無意識のうちに体の水分が蒸発しやすい

体のほぼ半分を占める「水」。成人の場合は体重の約60%、65歳以上の高齢者の場合は約50%を水分が占めています。この体に含まれる水分のことを「体液」と呼びます。

体液には血液、リンパ液、消化液、細胞と細胞の間を満たす組織間液などがあります。体液が全身を循環することで、体に必要な酸素や栄養分が細胞に運ばれ、不要な老廃物は尿として排泄されます。また、体温が上がったときに汗を出して体温を一定に保つのも、体液の重要な役割のひとつです。

体液は、汗や尿で体の外に出ていく水分と飲食によって体の中に入る水分のバランスがとれることで、一定の量が保たれています。ところが以下のような原因が生じるとこのバランスが崩れ、体液が不足しやすくなります。

  1. 1.【暑さ】夏場の気温の高さや湿気による大量の発汗で体液が失われる。
  2. 2.【病気】熱による発汗や下痢、嘔吐などで体液が失われる。
  3. 3.【飲食】胃腸の調子が悪い、トイレが近くなるので水分を控えるなど、何らかの理由で十分な水分をとらないと水分を補給できないため、体液が不足する原因になる。

さらに秋から冬にかけては、上の3つとは異なる原因で体液が不足しやすくなります。その原因とは「乾燥」です。体液は汗や尿のほか、皮膚からの水分蒸発によっても外に出ていきます。湿度が低く、乾燥する季節はこの水分蒸発が進むため、より体液が失われやすい傾向にあります。

また、暑い夏に比べると喉の渇きを感じにくいため、水分を積極的にとらない人も多くなりがちです。結果的に、体の外へと出ていく水分は多く、体の中に補給される水分は少なくなるため、体液が不足しやすくなるのです。

このように、知らず知らずのうちに体液が失われ、自覚のないまま脱水状態に陥ることを「かくれ脱水」といいます。

脱水症は脳、消化器、筋肉の3カ所で起こりやすい

かくれ脱水を放置していると、脱水症へと進行するリスクが高まります。
脱水症の初期段階では、主に次のような症状が表れます。

  1. 1.頭痛
  2. 2.集中力の低下
  3. 3.日中の強い眠気
  4. 4.食欲不振
  5. 5.腹部の不快感
  6. 6.胃もたれ
  7. 7.体に力が入りにくい
  8. 8.筋肉痛
  9. 9.足がつる

1~3は脳、4~6は消化器、7~9は筋肉で生じる症状です。脳、消化器、筋肉をそれぞれきちんと機能させるためには常に体液を循環させることが欠かせません。逆にいうと体液が不足すると、この3カ所に真っ先に不調が表れやすくなるのです。
とはいえ、どの症状も「ちょっと体調が悪いな」とつい軽く考えてしてしまいがちなのも事実。脱水とはなかなか結びつきにくいかもしれませんが、原因が分からないまま不調が続くようなら水分不足を疑い、すぐに対策を取りましょう。
基本は経口補水液で水分を補給することですが、飲食ができない状態だったり、症状が重い場合には速やかに医療機関を受診してください。

かくれ脱水を見逃さないチェックポイント

また、次のような脱水のサインに早く気がつくことも大切です。

■脱水症状をチェック

さらに65歳以上の高齢者の場合は、次の症状に該当するときは、かくれ脱水に陥っている可能性があるので注意が必要です。

出典
高齢者に存在する「脱水症」の前段階“かくれ脱水”を定義する
―400名を対象とした感度分析の結果から“かくれ脱水発見チェックシート”の提案―
谷口英喜ほか Geriat. Med. 2014年5月号(vol.52 no.5)

こまめな水分補給と室内の乾燥対策で脱水を防ぐ

かくれ脱水を防ぐ基本は、こまめな水分補給です。必要な量には個人差がありますが、1日1.5リットル程度を目安に2~3時間おきに水分をとる習慣をつけましょう。

高齢者の場合は特に、気温や体調の変化、喉の渇きなどを感じにくいことから、慢性的に水分が不足しがちです。服薬と同じように1日の中で時間を決めて、意識的に水分を摂取することを心がけましょう。

なお、必ず行ってほしいのは、朝起きたときにコップ1杯以上の水を飲むこと。というのも、就寝中も汗をかき、体液が減っているからです。

血液中の水分が不足すると血液が濃くなり、血栓ができやすくなります。そうなると脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが高まるので注意が必要です。

一方、若い世代においては、朝食抜きやダイエットなど不規則な食生活が原因で水分不足に陥っているケースが少なくありません。食事から摂取する水分も体液を一定に保つうえで必要不可欠です。特に朝食はしっかりとりましょう。

また、入浴後や飲酒後なども体液が失われ、脱水を起こしやすい状態にあります。お風呂上がりにふらふらしたり、二日酔いで頭が痛くなったり気分が悪くなったりしているときは水分不足の可能性大。しっかり水分補給することが大切です。

水分補給と同時に、乾燥から身を守り、水分の蒸発を防ぐということも今の時期は大切です。室内では次のような乾燥対策も併せて行うと効果的だと思います。

  • 加湿器を使う
  • 洗濯物や濡らしたタオルを室内に干す
  • 定期的に窓を開け、換気をする

さらに、冬は寒さ対策として気密性の高い素材を使った下着や衣類を身につける機会が増えますが、熱がこもりやすく体が熱くなると発汗して、水分を奪う要因になり得ます。そうしたものを着用しているときも、意識して水分をとるようにするとよいでしょう。

監修者プロフィール
谷口英喜先生(済生会横浜市東部病院 患者支援センター長、栄養部部長)

【谷口英喜(たにぐち ひでき)先生プロフィール】

1991年福島県立医科大学医学部卒業。神奈川県立がんセンター麻酔科医長、神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科教授などを経て現職。教えて!『かくれ脱水』委員会副委員長。専門は集中治療、臨床栄養、周術期体液管理・栄養管理、がんと栄養管理、集中治療分野における栄養管理、経口補水療法、熱中症対策。『イラストでやさしく解説!「脱水症」と「経口補水液」のすべてがわかる本【改訂版】』(日本医療企画)など著書多数。

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