筋肉・骨・神経
姿勢でラクになる 神経痛
痛みやしびれを伴い、生活の質を著しく低下させる神経痛。ひと口に神経痛といっても、肋間神経痛(ろっかんしんけいつう)や坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)などの種類があります。身近な痛みでありながら、意外と知られていない神経痛について、平和病院・横浜脊椎脊髄病センター長の田村睦弘先生に伺いました。
原因と症状
神経痛と筋肉痛の違いは?
筋肉痛は運動などによって、筋肉が疲労したり、炎症を起こしたりして痛みが生じるものです。一方、神経痛は、神経が圧迫されて痛みが生じます。また、ヘルペスなどのウイルスが神経節(末梢神経で神経細胞が集合している部分)に侵入し、神経痛を起こすこともあります。見分け方は、運動などの後の痛みであれば、筋肉痛の可能性が高いでしょう。神経痛は、体の片側に痛みやしびれが出るのが大きな特徴です。
神経痛の大半は坐骨神経痛
神経痛の多くを占めているのが、坐骨神経痛です。坐骨神経はおしりや太ももの筋肉の中を通り、足まで延びています。坐骨神経痛になると、腰をはじめ、おしりや太ももの後ろ、ふくらはぎ、すねなどに痛みやしびれ、感覚のまひがあらわれ、時には歩行障害を伴うこともあります。坐骨神経痛以外の神経痛には、片側の胸に痛みが走る肋間神経痛などがありますが、神経痛患者全体の中ではごく少数です。
坐骨神経痛の大きな原因は2つ
坐骨神経痛の主な原因は、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)と、腰椎椎間板ヘルニアです。この2つの見分け方の目安は、腰を後ろにそらしたときに腰や足が痛めば腰部脊柱管狭窄症。その反対に、前かがみになると痛みが出る場合は腰椎椎間板ヘルニアです。
●腰部脊柱管狭窄症
ほとんどの原因は加齢で、50歳以上の人に多く見られます。加齢によって、背骨の中心部分である脊柱管が変形を起こし、脊柱管の内部の神経が圧迫されて坐骨神経痛が起こります。
●腰椎椎間板ヘルニア
長時間のデスクワークや前かがみの姿勢、重労働、スポーツなど、腰に負担をかけることが主な原因になります。脊柱は椎骨(ついこつ)という小さな骨がブロックのように連なってできています。腰椎は脊柱の一部で、椎骨と椎骨の間にありクッションの役割を果たしている椎間板の一部が後方に飛び出し、それが神経を圧迫することで、下肢に痛みやしびれなどの症状を起こします。
治療法とセルフケア
坐骨神経痛の治療には保存療法と手術療法があります。しかし、これらの治療の土台となるのはセルフケアです。いくら治療を行っても姿勢が悪かったり、腰に負担をかける生活をしたりしていれば、症状はよくなりません。すぐ始められる簡単なセルフケアの方法を紹介します。
姿勢はS字カーブを常に保って
横から見たとき、背骨が自然なS字状カーブを保っているのが理想的な姿勢です。S字状カーブが崩れると、腰椎に負担がかかり、症状の悪化につながります。また、痛みが強くなるので、腰部脊柱管狭窄の人は腰のそらしすぎに、腰椎椎間板ヘルニアの人は猫背に注意してください。腰部脊柱管狭窄症の人は、正しい姿勢でも痛みが出ることがあるので、少し前かがみの姿勢になってもOKです。
股関節のストレッチも効果的
長時間のパソコン作業など、同じ姿勢をとり続けることが坐骨神経痛の悪化を招きます。パソコン作業が続いたときなど、股関節などのストレッチを行えば、下半身の筋肉の緊張がほぐれ、血流も促進します。その結果、坐骨神経痛の軽減も期待できます。そこで椅子に座ったまま手軽にできるストレッチをご紹介します。膝に手を添えるのは、腰の負担を軽くするためです。
- 背もたれのある安定した椅子に深く座る。
- 両膝をしっかり開き、膝に手を当てる。
- 胸を張るようにしながら、太ももの内側の筋肉をゆっくり伸ばす。
我慢しないで早めに対処を
神経痛をはじめ、痛みは長く放置しておくほど、取り除くのが難しくなります。痛みが長引くと痛みの記憶が脳に刻まれ、それが体にも心にも悪影響を及ぼすためと考えられています。現在では痛みの中枢に作用し、痛みをすばやく軽減する消炎鎮痛剤もあります。痛みは我慢せず、早めに受診しましょう。