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胃腸・肛門の痛みや不調

ストレスに対する身体からのSOS 過敏性腸症候群

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炎症や潰瘍がないのに、お腹の痛みや不快感に下痢や便秘を伴う症状が続く病気を過敏性腸症候群といいます。血液検査や内視鏡検査でも異常が見つからないこと、ストレスで症状が悪化することから心身症の一つとされています。東邦大学医療センター大森病院心療内科の天野雄一先生にうかがいました。

原因と症状

腸の知覚過敏とストレスが原因

過敏性腸症候群はお腹の痛みや不快感に下痢や便秘が伴う疾患で、男性では腹痛やお腹の不快感をともなう下痢型が、女性では便秘型になることが多いようです。 決して致命的な病気ではありませんが、電車の中などトイレのないところに長時間いられないなど、生活の質(QOL)を著しく損なうので、患者さんの不安や苦痛は一般的な慢性疾患の中でも大きいといえるでしょう。

過敏性腸症候群を発症する原因は、はっきりとはわかっていません。ただ最近の研究では、何らかのストレスが加わると、ストレスホルモンが脳下垂体から放出され、その刺激で腸の動きがおかしくなり、過敏性腸症候群の症状が出るといわれています。 さらに、この動きが繰り返されることで、腸が刺激に対して「知覚過敏」になり、ほんの少しの痛みや動きから、脳のストレス反応を引き出してしまい、症状が強化されるという悪循環に陥ってしまうのです。

感情表現が苦手な人ほどなりやすい

過敏性腸症候群などの心身症は自分の喜怒哀楽をうまく言葉で表現できない、感情を自覚できない「アレキシサイミア(失感情)」傾向の人がなりやすいことがわかっています。 辛いという気持ちを意識したり、怒りや悲しみを言葉で表現できないので、代わりに身体が”辛い”と表現することで症状が起こります。辛いという気持ちを意識できないと、ストレスに気づかないため、ストレスにさらされ続けるうちに身体が悲鳴をあげてしまうのです。

治療

薬とストレス・マネジメントの双方向からの治療が有効

心療内科を訪れる過敏性腸症候群の患者さんは、すでに消化器内科でもらった治療薬を飲んでいることが多いのですが、ライフスタイルや考え方のクセが元のままでは、結局同じことを繰り返してしまいます。そればかりか、せっかく、ストレスを表現していた腹痛や下痢を薬で抑えると、ますます無理をして、頭痛や胃の痛みなど他の症状が現れることもあります。 このため、過敏性腸症候群には、薬を適切に調整したうえで、自分の症状を受け入れ、症状と上手くつきあっていくストレス・マネジメントの方法を一緒に考えていく治療法が効果的です。

ストレスに気づき、自分を許してあげよう

一口にストレス・マネジメントといっても様々な方法がありますが、まずはストレスをはっきり認識することが大切です。 自分の症状が、どういう状況や出来事で酷くなるのかを評価し、その上で、避けられるストレスであれば避ける方法を、また、避けられないストレスであれば、自分が楽になる考え方や発散の仕方を探っていきます。

この過程で「ああ、自分は無理をしていたのだ」と気づく人も多いのですが、実はそれだけでも十分な進歩なのです。ストレス社会の現代では、時に自分を許してあげることも必要です。 無理をせず、ゆっくりしたペースで歩みながら、むしろ「身体からの警告」を上手く利用して、休めるようになればしめたもの。美味しい食事や、適度な運動など良い習慣を取り入れ、生活全体の質をあげることで結果的に過敏性腸症候群の症状が軽くなるかもしれません。

以下に、代表的なストレス・マネジメント方法を紹介します。

代表的なストレス・マネジメント方法

コーピングとは

コーピングには、出来事に焦点をあて外から働きかける方法と、自分の感情や行動に焦点をあて内側からストレスを軽くする方法があります。 「仕事の悩みを誰かに聞いてもらう」ことでも、上司に相談して、解決を図る(外からの働きかけ)と、友達に話して気持ちを落ち着かせるため(内側からの働きかけ)との2つの側面があります。 どちらが良い、悪いではなく、自分の「健康と幸せ」に役立つかどうかがポイントです。自分にあった方法を根気よくさがしていきましょう。

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